【症例報告】ショック状態とは?

ショックと言えばどういう状態を思い浮かべますか?

たまたまショックの患者さんを診察した時に、どれくらいの方が本当の意味をご存知かと思い今回はそのお話をさせて頂きます。もちろん、私も獣医学を習うまでは知りませんでした。
我々獣医師がこの言葉を発した場合、飼い主様と我々での認識に差があるととても危険と思い、文章ばかりにはなりますが報告させて頂きます。

一般的に思い浮かべるショックは「精神的なもの」ではないでしょうか。
しかし病態のショックは、精神的にもダメージは受けるでしょうが、それ以上に体が重いダメージを受け命の危機にある事を指します。
しかし実際には、ショックの病期は3つに分ける事が可能で、以下に述べるような末期的な状態に遭遇する事はあまりありません。

細かい分類もありますが、端的に言えば「生命維持に重要な脳や心臓に体中の血液を集め、変わりに体の端々や内臓などの血流が極端に低下する状態」です。

・そもそも血液の仕事とは?
1番大事なのは、体の端々の細胞まで酸素を届ける事です。細胞は酸素が無ければあっという間に弱り、死んでいきます。細胞が酸素から作るエネルギーで我々の体は維持されています。ですからショック時は一番エネルギ−の必要な脳へ血流が集中するのです。

・血流が低下した臓器はどうなるか?
上記のように酸素欠乏状態に陥った臓器は、維持に十分なエネルギーをつくれず、細胞が死にはじめます。
そしてそれが進めば進む程、多臓器不全の路をたどる事になるのです。臓器の維持できる最低レベルの平均血圧が60mmHgを切ると腸の粘膜が死に、はがれ落ちます。少し肛門から指を入れる事で判断可能な事もありますし、多量に下血する場合もあります。

・何ができる?
生体もバカではありませんので、臓器などの血流(正確には血圧)の低下を感知して、血圧を上げるように働きます。しかしここでも多量のエネルギーが必要となるのです。つまり酸素をしっかり届ける事が必要なのです。じゃあ酸素を吸わせればいいのか?そうではありません。肺が正常と仮定して、酸素をいくら血液中に入れても限界がありますし、大事なのは体の端々までの血流を維持してやる事なのです。

・気づかず進行した場合
多臓器不全、腸粘膜の脱落による逆行性の敗血症、ショックを起こした原因の病態の各症状
つまりは限りなく死に近い転記をとると言う事です。

・まず一番に
静脈内輸液のルート確保(血管が低血圧によるペチャンコで難しい場合も多々あります)
輸液の投与
各種状況への対応

・ご自宅で
歯茎が虚血してる
手足がかなり冷たい
低体温

・回復率
治療開始時にどれほど病態が進行しているかにより様々です。
一般的には、厳しいことが多いと思われます。